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15世紀の羊毛職人とフィレンツェを歩く! めちゃくちゃ楽しい歴史散歩アプリ Hidden Florence

フィレンツェに来ています。数年前にダウンロードした、フィレンツェに来たらぜひとも使おう! とずっと思っていたアプリがあって、でも来るたびに忘れるので悔しい思いをしていたのだけど、今回はしっかり覚えてた。やったね。

というわけで、アプリ Hidden Florence を紹介するぞ。無料だぞ。

Hidden Florence
Hidden Florence
開発元: University of Exeter
無料

ざっくり言ってしまうと、ルネサンス期フィレンツェの様子が体験できるオーディオガイドである。ときは1490年。フィレンツェで羊毛職人として暮らすジョヴァンニ・ディ・マルコがアプリ利用者のガイドとなり、都市生活のことや最近あった出来事などについて語ってくれるという内容だ。

英語とイタリア語しかないので日本人からしたら言語的ハードルはあるのだけど、「英語 or 伊語チョットワカルヨ」という方はぜひチャレンジしてみてほしい。

このアプリでは、利用者がマップに沿ってフィレンツェを歩きまわることが想定されていて、特定の地点に来ると、突如音楽が鳴りはじめ、その地区やモニュメントや建築等についてジョヴァンニが語り出す。実際の場所に立ち、通りを歩きながら、往時のようすを聞くことによって、王侯貴族や有力商人が主役なタイプの歴史書ではなかなか知ることのできない、15世紀フィレンツェの「普通の人」の生活がありありと再現される…という仕組みなのだ。

このジョヴァンニなる人物はじつは架空のキャラクターで、15世紀後半のフィレンツェにいたであろうような人物造形がなされている。まぁ細かいところまで作りこもうとすると、ガイド役のキャラクターはフィクショナルなほうが勝手がよいよね。

しかしジョヴァンニの肖像、完全にマザッチョ。

ルネサンス期フィレンツェの庶民の生活を覗く

さっそくマップを開いてみよう。現在はプレインストールされている「市街地コース」と、ダウンロードすれば利用できる「サンタンブロージョ地区コース」、二種類の散歩コースが楽しめる。開発者チームのブログを見ると、近々ほかのコースも足されるようだ。ちなみに、この古風な地図はステファノ・ボンシニョーリによる16世紀のフィレンツェ図に基づいている。道があまり変わっていなくてびっくり。

番号が書かれているところに行くとトークが始まるぞ!

「市街地コース」から行くべきだとは思ったが、ちょうどサンタンブロージョ教会に行く用事もあったので、「サンタンブロージョ地区コース」からやってみることにした。ジョヴァンニはこの辺りに住んでいる設定らしい。サンタンブロージョ教会はフィレンツェの東エリアにあって、建築家アルノルフォ・ディ・カンビオの図案によるといわれる市壁(1284年建設)の外側に位置していた。当時の感覚ではフィレンツェ郊外といった感じだろうか。

GPSをオンにしていれば、教会前の広場(地図上の①)に着くと自動的にジョヴァンニのトークが始まる。彼の語りを聞いていると、ファサードの端に埋め込まれている、3本の塔のマークが彫られた石の印に注意がうながされる。たしかにこれは言われないとなかなか注目しないかも…。

「教会前面の右端にある銘を探してみよう!」
サンタンブロージョ教会のファサード。この右端に…?
コレか…??(写真だと図案がよく見えない)

これは「チッタ・ロッサ(「赤い都市」の意)」というポテンツァをあらわすシンボルなのだそうな。ポテンツァとはこの地区の祭礼を運営する組織で、チッタ・ロッサは毎年5月に仮装行列を組んで地区を練り歩いたのだとか。その際にはチッタ・ロッサのメンバーのなかから一人「王」を演じる者を選出するのが特徴。一度ジョヴァンニも王様役をやったことがあるらしいよ!

このような、漠然と見ていると見逃してしまうような細部に、歴史があるものだなぁ…としみじみ感じさせられる。

学術的サポートもしっかり

だが、当時の人間からは見えないこともある。大局的な状況というのは、ある程度時間を経てからじゃないと可視化されないものだ。

そこで、ジョヴァンニの説明を聞き終えたあと、画面下部にあらわれる Discover More をタップしてみよう。歴史学の研究者による歴史的背景の解説が聞けるぞ!(解説は英語のみでイタリア語なし)なにを隠そうこのアプリ、英エクセター大学のプロジェクトとして開発されているのだ。その分野のトップクラスの研究者が関わっているので、情報源の信用度は高い。

この下にある Discover More をタップすると…
背景がカラー写真になり、研究者の解説が聞けるぞ!

解説によると、サンタンブロージョ周辺エリアは郊外ということもあり、比較的貧しい労働者階級の職人たちが集う場所だったらしい。こういった人々はたいていの場合「市民」にカウントされることもなく、政治に参加することも許されなかった。しかし、チッタ・ロッサのお祭りの日だけは、そのような人々から「王」が選出され、普段彼らを統治している人々の上に君臨する。いわゆる「さかさまの世界」が現前するのだ。

こうした行事は祝祭であるとともに、労働者階級のストレスや不満を解放するための一つの手段でもあったとか。1378年に起こった下層労働者の反乱「チョンピの乱」は、まさしくこのサンタンブロージョ周辺が主な舞台となったので、この辺りの労働者の蜂起はけっこう現実的なリスクとして認識されていたはず。彼らの鬱憤をうまく発散させてやることは、そういった政治的に重要な役割も帯びていた。

歩きながら解説を聞くのも楽しいが、もっと知りたい向きは公式サイトに飛んでみよう。メニューの Stories にはルネサンス期フィレンツェを生きた人々の物語がいっぱい詰め込まれていて、これを読むだけでもかなり楽しい。しかもばっちり参考文献もついているからうれしいね。

歩きながら使うときは気を付けて

フィレンツェを歩き回りながら使うアプリだとは言ったけど、べつにフィレンツェにいなくても、ジョヴァンニの語りも研究者の解説も聞ける。とりあえずオーディオだけ楽しむのもアリだ。教会のなかに入ると声の響き方が変わるとか、音響も凝っている。

ただ、歩きながら使うときはけっこう周囲に注意しないと危ないことになる。歩きスマホ状態になりがちなので、狭い道では知らないうちに往来の邪魔になってしまっていることも…。人や車の邪魔にならないところで落ち着いて解説を聞こう。ジョヴァンニに立ち止まって注意深く見るように指示されるところが、現在ではなんでもない普通の家の前なんてこともあるので、「立ち止まりにくいな…」みたいなこともあった。

一方で、自分ではなかなか行かないような通りを歩くことにもなり、かわいいお店やおいしそうなレストランを見つけたりもできてよい(あらゆる街歩きに言えることだが…)。サンタンブロージョの辺りはいまも職人が多いのか、ハンドメイドの洋服やアクセサリーのお店が多いように感じた。スカート買いました。

ごちゃごちゃ書いたけど、アプリの使い方については公式の動画を見るのがいちばん手っ取り早いかも。というわけで埋め込んどきますね。

現在1件のコメントがあります。

  1. Thanks for your comments – we’d love to make a Japanese app too – but for now we only have English and some Italian. We are about to launch new stories as well. follow @hiddenflorence

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