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ブレラ絵画館はあなたを絵画の虜にする

ミラノの美術館といえばブレラ絵画館! 今回ミラノ初訪問だったので、ブレラ行くのもはじめてだったが、すっごくよい美術館で感動してしまった。

ブレラ絵画館はナポレオン占領時代につくられたので、イタリアでは比較的新しめの美術館と言えるが、「イタリアのルーヴル」となるべくつくられたこともあり、そのコレクションはピカイチだ。とくにヴェネトやロンバルディアの絵画作品が充実していて、ベッリーニやマンテーニャ、レオナルデスキたちの作品が目白押し。ベルナルディーノ・ルイーニがこんなに多作だとは知らんかった。

しかしここで書きたいのは持ってる作品群のよさについてではない。ブレラ、作品の見せ方がめちゃくちゃ上手い。こんなふうに展示されたら絵が大好きになっちゃうな〜と思わせる工夫がそこかしこにあって、ブレラ絵画館の中の人たちがいろんな方法で絵画に興味を持ってもらおうとしているのがひしひしと伝わってきた。以下ではその工夫の数々を紹介していくぞい。

キャプションの妙

館内に入るとまず美術館の成り立ちと立ち位置についての解説があるんだけど、そこでブレラでは作品のキャプションに力を入れていることが説明される。

それによると、ブレラ絵画館のキャプションは3種類。まずは一般的な美術館にあるような、作家の名前、作品主題、制作年代、メディア、来歴、作品解説などを記したキャプション。それに加え、ナウなヤングにも楽しめる解説や鑑賞指南が書かれたジュニア向けのキャプション。そして最後に、当該の作品に言及した美術史家、歴史家、小説家、詩人などなどのことばを紹介するキャプション。

たとえばこの15世紀フェッラーラの画家フランチェスコ・デル・コッサによる絵画には、作品情報を記した普通のパネルと、作家アリ・スミスによる小説『両方になる』からの一節を紹介するパネルが並置されている。

ちょっと硬めの線描が魅力のコッサ作品! これは《聖ペテロ》と《洗礼者聖ヨハネ》。
普通の解説キャプション。右に見切れているのはジュニア向けの解説だ。
『両方になる』からの引用を記述したキャプション。

『両方になる』はまさしくフランチェスコ・デル・コッサが主役の一人として登場する小説で、最近新潮社から邦訳も出た(とっても面白かったです)。絵を見ながらこの引用を読むことで、鑑賞者の想像力も刺激される。

もちろん全ての作品に複数のキャプションがついてくるわけではない。でも、絵画そのものにはピンと来なくても、あの作家が言及してる絵なのか〜と思えばまたちがった関心の持ち方ができる。ちょっと異なる切り口で作品についての興味を持たせる、上手いやり方だと思った。

触ってわかる再現度

15世紀以降の絵画作品は、現実世界を模倣する技術が格段に向上するので、いわゆる「リアル」な表現が出てくる。中世の趣を残す装飾豊かな絵画でも、聖人たちが身にまとう刺繍入りの織物、貴婦人たちのベルベットのドレス、その下から覗く絹のシャツ、まるで触れたときの手ざわりまで分かるようなリアルさだ。

15世紀ヴェネツィアの画家カルロ・クリヴェッリのこの作品なんか典型ですね。

とっても華やかなクリヴェッリ作品。

でも、金襴の織物とか深紅のベルベットとか、ほんとに触ったことってある? (ベルベットくらいはあるかもしれん)  いずれにせよ、本物の手ざわりを知らないのに、「手ざわりまでわかる〜」なんて言ってるのはナンセンスだ。

ハイ、では触ってみましょうね! あまり多くはないけど、何枚かの絵画には「画家が絵筆で再現したかったモノ」のサンプルが貼り付けられたパネルがあって、自由に触れてみることができる。

ベルベット生地のサンプル。ふっかふかやで!
金襴のサンプル。ちゃんと生地の解説もある。

ふかふかのベルベット生地を触ってみれば、クリヴェッリがどのようなテクスチャを再現しようと頑張っていたのか、より感覚的に理解できるだろう。金襴の織物も同じように触れるようになっているが、こちらは織り込まれた金糸がどのように光を反射して鈍く輝くのかを知るのにも役立つ。

これらを体験したうえでもう一度絵画を見てみれば、こうした絵画内のさりげなく実現されている再現表象が、どれほどの驚異であったかもよくわかるように思う。

関係ないけどこのクリヴェッリの絵、一部立体になってて面白い。しかしお前、絵筆で再現するのあきらめたんか?

聖ペテロのもつ鍵が立体だぞ!

お絵かきコーナー

さらに、とくに広い展示室では、ときどき特殊な形の椅子と画板が設置してあり、そこには画用紙と鉛筆が置いてある。やったー模写し放題だー!

突如現れるお絵かきコーナー。

ひとつ前の記事でも触れたが、なぞって描いてみることによって得られるものは多い。ただぼーっと見ているだけではなかなか気づかないところが可視化されるし、単純にひとつの作品を眺める時間が長くなるので、細かなところまでじっくり見られる。

なので、こうしたお絵かきコーナーは鑑賞者をひとつの作品の前にとどめ置く装置として機能しているのだろう。 実際、ひとつの作品を時間をかけてじっくり見るというのは技術だ。すぐ次に行ってしまいそうになる。美術作品を前にしても、キャプションだけ見て作品あんまし見てない、みたいなことないですか。

ちょうど席もあいていたので、私も描いてみた。チーマ・ダ・コネリアーノの祭壇画(の一部)。けっこう難しい!

目の前の作品に集中!

というわけで、ブレラ絵画館はあらゆる方法を駆使して鑑賞者に絵画を楽しんでもらおうという気概が感じられる最高の美術館だった。がんばってる美術館だいすき。ミラノにお越しの向きはぜひゆっくり時間をとって行ってみてね。

現在1件のコメントがあります。

  1. 鑑賞補助の工夫が各所にあって素晴らしい。チーマ・ダ・コネリアーノを間近にしてのお絵かきは楽しそうですね

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